初恋ナミダ。


どちらにせよ、私にとっては痛い話なので苦笑いを浮かべる。


「あー…それは、忘れていただけると助かります」

「ダメだ。あのままじゃ中間も期末も赤がつくぞ」


お小言モードに入った椎名先生は腕を組み、どうするつもりだと言う様に目を細めた。

椅子に座ったままの私は、居心地の悪さになんとなくプリーツスカートの折り目を正してみたり。

その様子を、椎名先生は無言で見下ろしている。


「えっと……赤は嫌だけど、そもそも数学は得意じゃなくて」

「得意じゃないのは点数でわかる」


で、ですよねー。

だから椎名先生もここでこんな説教してるんだろうし。

大体、どうしてこの世に数学が存在するのか。

私にとって数学は、やる気スイッチが入りにくい教科なのだ。


……あ、そうだ!

いいこと思いついた。


突然表情を明るくした私に、椎名先生の眉がピクリと動く。

そして。


「ね、先生。数学頑張ったらご褒美くれる?」


私の言葉を聞いて、今度は眉を寄せた。


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