初恋ナミダ。


と、頭の中で点数を上げる算段を立てていたら、いつの間にか椎名先生が本棚と向き合っていることに気付いた。

コーナーは……


「医学?」


先生は先生でも医者の方に興味が出たんだろうか。

背表紙のタイトルに視線を滑らせる椎名先生は、やがて一冊の本を手にすると、今度は参考書が並ぶコーナーに向かう。

そして、更に数冊手に取ると、私の前に立った。


「この辺りならわかりやすいだろ」

「え?」


目を瞬かせる私の手に、先生は数学の参考書を乗せて。


「テストの点数、楽しみにしているからな」


どことなく挑戦的な笑みを浮かべた。


「は、はーい……」


これは本気で頑張らないと。

でも、私自身、適当に約束したわけじゃない。

それに……何だかんだとこうして参考書を選んでくれる椎名先生の期待には応えたいのだ。


「それじゃ、俺はこれで」

「あ、待って」


引き止めたのは、聞きたいことがあったから。


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