初恋ナミダ。
先生は振り返り足を止める。
「椎名先生って、うちの卒業生だったってホント?」
問えば、先生は特に驚いた様子もなく。
「どこで聞いた?」
逆に問いかけてくる。
どこで……というのは、もしかしたら言わない方がいい気がして。
私は「あるスジから」と濁した。
「内緒だった?」
「……別に隠していたわけじゃない」
ということは、本当だということ。
「そっか。じゃあ、この学校には先生の思い出がいっぱいなんだ」
なんとなく口にした言葉だった。
ほんの世間話のような会話。
なのに、椎名先生は……
ぼんやりと、懐かしむように私を眺めて。
「そう、だな」
呟くように肯定すると、背を向けて立ち去ってしまった。