初恋ナミダ。
*特別な人
意識して作れば時間は割りとあるもので。
椎名先生にご褒美の約束をとりつけてから1週間。
私は毎日時間を作っては数式と睨めっこしていた。
ある時は1人図書室で。
ある時はくるみの家で。
通学中のバスの中で……は、してないけど、常に頭の中に数字が浮かんでいる状態ではあった。
そして、数学の授業中である今は、新しい知識を頭に入れるため、ノートに数字や記号を書き連ねているわけだけど…
「……はぁー……」
無意識に溜め息を漏らした私は、そっと手でこめかみを抑えた。
数学の授業が嫌なわけじゃない。
連日の勉強で数学に嫌気がさしたわけでもない。
もちろん、椎名先生に嫌悪感を抱いたりもしてない。
でも、溜め息の原因は、数学であることには違いなく。
──ツキン。
私はまたしてもその感覚に眉をひそめた。