初恋ナミダ。
学校の校舎裏にある駐輪場に辿り着くと、しゃがみ込みながらスマホをいじる幼なじみを見つけた。
「悠馬(ゆうま)、お待たせ」
声を掛けると、悠馬は顔を上げた。
そして、そのタレ目がちな二重の瞳で私の姿を認めるなり眉を寄せる。
「おっそい。何やってんだー」
文句を口にしながら立ち上がる悠馬に、私は苦笑して唇を動かした。
「ごめん。ちょっとしたアクシデントがあって」
「アクシデントって?」
尋ねながら、悠馬はスマホを紺色のズボンのポケットに入れる。
私はその動作を目で追いながら「階段から落ちそうになったの」と話した。
そうすれば、悠馬の瞳が丸くなって。
「は? 怪我は?」
「ないよ。椎名先生に助けてもらったから」
答えると、悠馬はちょっと嫌そうな顔をして自転車に鍵を差した。
「椎名か。俺、あいつ苦手」
うん、知ってる。