初恋ナミダ。


「足りてねーから。このままじゃ嫁の貰い手なくなるぞー」


何故か勝ち誇った顔をしながら話す悠馬に、頭の痛みを堪えながら余裕の笑みを返した。


「大丈夫。ちゃんと私を可愛いって思って貰ってくれる特別な人はいるから。きっと、多分、おそらく」

「それ、完全に予定は未定の言い方だから」


むっ。確かに未定ではあるけど。

それに、別に白馬の王子様を夢見てるわけでもないけど。

それでも、いつかそんな人に巡り会いたいと思うのは、女子としては当たり前の願望だと思う。

ていうか、いい加減寝ないと。

そう思って、掛け布団を被り直そうとした時──


「遥にとっての特別なやつってのは……いんの?」


なんだか妙に真剣な声で聞かれ、私は動きを止めた。


特別な人っていうのは、好きな人のことで。

今の私には、そんな対象の人は──


「……いない、けど」

「けど?」


いないはずだ。

でも、何故か一瞬だけ頭に過ぎった人がいて。


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