初恋ナミダ。


「なら、さっきのは?」


こうして更に言及されるのも驚きで。


「私にも何がなんだか」


椎名先生の事も含めて首を傾げてみせると、先生は「……そうか」と呟いて、ようやく表情をいつものものに戻してくれた。


「具合、平気か?」


いつもの空気感に胸をなでおろして、私は小さく頷いた。


「大丈夫です。こんなのすぐ治るから。あ、そうだ。先生が選んでくれた参考書、あれわかりやすくて助かってます。ちょっとだけ数学の苦手意識がなくなったかも」


それは、先生の笑みが見たくて出した話題だった。

だけど……


「もしかして、調子が悪いのは勉強のせいか?」


失敗。

私の話が先生の眉間に皺を作らせてしまった。



< 87 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop