初恋ナミダ。


椎名先生は女子ウケはいいけど男子ウケが悪い。

女子ウケがいいのは言わずもがな容姿が主な原因なんだけど、男子ウケが悪い原因は真面目さが仇となっているかららしい。

悠馬に至っては、1年の時に何度も制服の着方について注意されていたようだった。

ちなみに、現在も悠馬の制服の着こなしは正しいものではない。

指定されているネクタイはしてないし、ブレザーじゃなくてパーカー羽織ってるし。

うちの高校は口うるさくない方だけど、それでも悠馬は学年の中でもなかなかに自由人間かも。

別に不良とかじゃないんだけど……こう……なんか、チャライというかお調子者というか。

でも、性格は悪くないし、友達も多い。

こうやって……


「よし、後ろ乗れ」

「うん」


都合が合えば自転車で私を家まで送ってくれたりもする優しいところもあったり。


悠馬の腰に手を回すと、自転車がゆっくり加速を始める。

ペダルを漕ぐ悠馬を見れば、ゆるくパーマのかかったショートレイヤーが風に靡いていて。


「悠馬、髪色変えた?」

「おう! 少し明るくした」


お日様の光を受けた髪は、確かに以前より明るめのブラウンだ。

私もそろそろ美容院行きたいなと思い、左手でミディアムロングの髪に触れる。

その時、タイミング悪く自転車が揺れて、私は急いで悠馬の腰にしがみついた。


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