初恋ナミダ。
舞子は今日も私を笑顔で迎えてくれて、私もそれに笑顔で応える。
会話の内容はとりとめもないものばかりだけど、私は舞子とのそんな何気ない時間が好きだ。
それは多分、血の繋がった姉妹だからこその気兼ねなさがあるからだろう。
ひとしきり話して喉が渇いた私は、お財布を片手に、一階にある売店へと足を向けた。
「はい、ありがとうございました」
手に平におつりを乗せられて、それをお財布に入れながら、私はまた舞子の待つ病室を目指す。
エレベーターは総合受け付けの近くにあり、受け付けの前には椅子が並んでいて。
なんとなく、視線を滑らせれば。
「──あれ?」
受け付けから離れ、病院の玄関に向かう1人の男性に目を奪われた。
だって、似てるから。
私の知る、数学教師に。
他人の空似?
それとも本物の椎名先生?
そういえば、先生のデスクに薬が置いてあったっけ。
風邪、まだ治ってなかったとか?
首を傾げてる間に、その後ろ姿は自動ドアの向こうにあって。
結局、先生なのかどうかはっきりしないまま、私はエレベーターへと乗り込んだ。
もしも椎名先生だったなら、風邪こじらせてませんようにと祈りながら。