初恋ナミダ。


「中間は苦手なところが多かったんだもん。期末までには克服するので大丈夫です!」


だからこそ、こうやって先生に教わりに来てるわけだし。

それにしても……やっぱり気付いてない、かぁ。

そうだよね。

悠馬の観察力がすば抜けてるんだよね。

先生が気付かなくても当然。

頭ではわかってるのに、何故かその事が、ちょっとだけ残念に感じた。



それから、数十分後──


「終わったー! 椎名先生、ありがとう」


達成感と共にお礼を口にし、シャーペンや消しゴムをペンケースにしまっていく。

数学の専門書を読んでいた先生は顔を上げると静かに本を閉じた。


「お疲れ。頑張ったな」


労いの言葉を貰えるとは思ってなくて、私ははにかみながら立ち上がる。


「ご褒美、楽しみにしてまーす」


忘れてないよね? という確認も込めて尋ねると、先生は僅かに肩をすくめてみせた。

そんな先生の態度を小さく笑って、名残惜しさを感じつつもノートやペンケースを手にする。

そして、もう一度お礼を言って準備室の扉に手をかけた時。


「ああ、そうだ。言い忘れてたけど、髪、少しスッキリしていいんじゃないか?」


耳に届いた先生の言葉に、私は勢い良く振り向いた。


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