元カレには彼女がいる。でも好きで仕方ない
イヤホンを付ける手は無意識に止まっていて、耳は会話を必死に聞き取ろうとしていた。




”りょう”って…涼くんのこと?




「えっ…違うでしょ?」


「絶対そうだよ!私聞いたし、中学一緒でモトカノだったみたいよ!今でも仲良いらしい」


「でも、”りょう”は奈緒ちゃんと付き合ってるじゃん」


「それをあのモトカノが奪おうとしてるって聞いた!ウチ卒業文集で見せてもらったからわかるよ!絶対あれそうだよ」








わたしの事だ。
そしてやっぱり”りょう”は涼くんの事。



聞きたくない…
怖い……
なんで知っているの?なんで…




震える手がイヤホンを持つ力さえ奪う。
聞きたくない…やめて…


願いとは逆に、会話は進んでいく。






「それあり得なくない?
てか地味〜ブスじゃん!」



「ねぇ、そんな大きい声で言ったら
聞こえちゃうよ〜」




「言われて当然じゃない?人の彼氏奪おうとしてるんだから!ゴミ以下」








笑い声が突き刺さる。
ダメだってわかっていたよ。
どう思われようと構わないって覚悟もしてた。




それでも、世間の声は想像より遥かに遥かに……
冷たくて、痛かった。


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