紺色の道が終わる場所[短編]
いつもより少しだけ腫れたまぶたの彼女は、
おそるおそるといった感じで、僕を見上げた。
彼女はもう声をあげて泣いていなかったけれど、
瞳にはたくさん涙がたまっていた。


そんな彼女とキスをする。


それを重ねる。


再び僕らは見つめあって、彼女は笑った。
その拍子に、涙が一滴、頬を伝う。



「こら、泣け」



ふいうちだった。
彼女の言葉に、どんと胸を押されたように、こらえていたものが溢れそうになる。
僕は上を向いて、ううーとうなった。
そんな僕を見て、彼女は声をあげて笑った。



「どうして我慢するの?」



「男だから」



「はは、私は女の子でよかった」



ほら、彼女の物言いはやっぱりどこか変わっている。
男だからとか関係ないよ、とか今くらい泣いたっていいのに、とか
そういうふうに言ってくれたっていいじゃないか。


あまりに彼女らしい言葉に、なんだか力が抜けて、僕は、なんていうか、とても情けない顔で笑った。
そんな僕を見て、彼女はまた笑う。



「あいにいくよ。休みの日は必ずあおうね」



そう、今こそこの言葉が必要だった。
僕らの絶妙なタイミング。
結局彼女に言われてしまって、少し悔しいけれど
これが僕らの形だった。そしてこれからも。



「いきますか」
僕は少々の間をあけて、そう言った。



「いきますか」
彼女は僕とそっくりなトーンで、そう言った。


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