俺ん家じゃなかったんだ
こんなんじゃなかった
洞穴

『くそ!くそ!くそ!
恩知らず共が…あいつらは何もわかってない
私が正しいのがわからんとは阿呆か…あいつらは!』
そんな呟いたり叫んだりの声が山奥の湿気の多い洞穴から聞こえてくる。

その声の主はシラミやフケで汚れた乱れ髪を掻きむしりながら
たまに足元の濡れた岩肌を拳で叩きながら疲れては膝をついて座り込みまた呟きだした。
叩いた拳は生来華奢な躯で膂力も人並み以下だから
傷つくこともなく血も滲まない。
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