【完】いつも通っている道に恋が生まれる


汗を拭き取り、梅原さんは眼鏡を外してハンカチで拭いていた。

真面目な話をしているのに、私は目の前の梅原さんが眼鏡を外している姿に見入ってしまった。

梅原さんの眼鏡を外した姿。
初めて見た。眼鏡なくても、かっこいい、芸能人になれるのではないかと私は思った。

だが、梅原さんが眼鏡をつけた瞬間、私は何かのスイッチが切れたのか大きい声で梅原さんに言った。

「梅原さんが大丈夫な訳ないじゃないですか?」

私は立ち上がりテーブルを叩いて言った。

その時、マスターが出来たよと言って、
オムライスとスパゲティを持ってきてくれた。
マスターは、気を遣ってくれたのか、なにも言わないで立ち去っていた。

「……座って下さい」

「すいません」
私は梅原さんに謝った。

「食べながら話しをしましょう」

「はい……」

「花守さん、俺は今日花守さんとこうして話しをしてきましたが、本当の俺じゃないんです。いつも見ている俺はきちんとしているように見えますが、本当の俺は臆病なんです。母親から受けられた暴力で女性の顔を見ると、母親を思い出すんです」

「では、私といるとお母さんを思い出しますんですか?」

私は今焦ってる。

私はこの人を逃したら、いい人を見つける気配すらないからだ。

「……分からないんです。花守さんとは……でも、付き合う自信がないんです」
< 33 / 53 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop