【完】いつも通っている道に恋が生まれる
汗を拭き取り、梅原さんは眼鏡を外してハンカチで拭いていた。
真面目な話をしているのに、私は目の前の梅原さんが眼鏡を外している姿に見入ってしまった。
梅原さんの眼鏡を外した姿。
初めて見た。眼鏡なくても、かっこいい、芸能人になれるのではないかと私は思った。
だが、梅原さんが眼鏡をつけた瞬間、私は何かのスイッチが切れたのか大きい声で梅原さんに言った。
「梅原さんが大丈夫な訳ないじゃないですか?」
私は立ち上がりテーブルを叩いて言った。
その時、マスターが出来たよと言って、
オムライスとスパゲティを持ってきてくれた。
マスターは、気を遣ってくれたのか、なにも言わないで立ち去っていた。
「……座って下さい」
「すいません」
私は梅原さんに謝った。
「食べながら話しをしましょう」
「はい……」
「花守さん、俺は今日花守さんとこうして話しをしてきましたが、本当の俺じゃないんです。いつも見ている俺はきちんとしているように見えますが、本当の俺は臆病なんです。母親から受けられた暴力で女性の顔を見ると、母親を思い出すんです」
「では、私といるとお母さんを思い出しますんですか?」
私は今焦ってる。
私はこの人を逃したら、いい人を見つける気配すらないからだ。
「……分からないんです。花守さんとは……でも、付き合う自信がないんです」