【完】いつも通っている道に恋が生まれる
通行人は、何あの人どうしたのという目で私を見てくる。
梅原翔生さんは後ろを振り返り、自分の胸ポケットを見て、ないことに気づいたのか私を見て、こちらにやってきた。
早足で私の方へ向かってきた。
え?
私の方まで来るの……そうよね……
来ないと、免許証渡せないもんね。
現実を把握して、やっと私が気になっている人と話が出来ると胸が高ぶっていた。
私は、ドキドキしながら立ちすくんでいた。
「すいません!それ俺のです。ありがとうございます」
「いえ、落ちてたので何かなとおもって拾っただけです」
私は、梅原翔生さんに免許証を渡した。
梅原さんの手に、免許証を手渡した。
その時の梅原さんの手があまりにも大きかったので、小さい私の手に触れそうになり、ドキドキが収まらなかった。
「でも、よく俺のと分かりましたね」
「……すれ違った時、顔憶えていたので」
梅原翔生さんは、少し驚いた様子で私を見てきた。
「そうですか、ありがとうございます。では失礼します」
梅原翔生さんは、免許証を胸ポケットにしまい、行こうとしていた。
もう行ってしまうと思った私は、勇気を振り絞り話しかけた。
「あの………」
「何でしょうか?」
「あのあなたを好きになちゃったみたいです」
梅原翔生さんは、固まっていた。
私は、何を言っているんだ。
梅原さんが困っているじゃないか、何を口走ってるんだ。
あー梅原さん、どんな反応するんだろう。
私は下を見つつチラチラと梅原さんを見た。
「………あ、魚の鯉ですか?あ、それなら右に曲がった所にありますよ」
え?
まさかの魚の鯉と間違えたーー。
梅原翔生さんは、人差し指で魚の鯉の場所を教えてくれた。
だが、私が言いたいのは魚の鯉ではない。