ほたるの初恋、消えた記憶
俺も一緒にクレープを食べるからと、同じ列に祐吾が並んだ。


あかりさんはどうしたの?


「ほたるは心配しなくていいから。」


心配なんかしてません。


奈々子が帰ろうかと言うから、必死に止めた。


祐吾と二人になりたくない。


彼氏でもない祐吾にぶちきれたそうだったから。


冷静でいられない自分が恥ずかしかった。


祐吾は同級生で、それ以上でも以下でもない。


外のベンチに座り、三人で無言のままクレープを食べてると。


「聞きたくない話かも知れないが色々な事情があって、あかりと婚約はしだけど、もう婚約は破棄した。」


ふ~ん。


その話はどうでもいいです。


だけど、祐吾は話を続けた。


あかりさんは心臓の病気があり学校へも行けず、心を閉ざしていたけど、祐吾だけには違ったらしい。


あかりさんとは兄妹のように育ったから、あかりさんの好きは兄として祐吾を好きなのだと言うけど。


祐吾それは絶対違うからね。


恋愛をしたことがない鈍感な私でも、痛いほど祐吾を思うあかりさんの気持ちが分かった。


なんか複雑な関係ですねと奈々子が笑う。


「あかりさんは祐吾を男として好きなんだよ。祐吾は彼女の気持ちが分からないなんて、本当に鈍感だね。」


私の言葉に祐吾がかなり驚いてるけど、奈々子も同じだと言った。


祐吾の婚約者があかりさんであることは、この先も変わらない。


祐吾には悪いけど、祐吾と私のいる世界は違い過ぎる。


私は平凡に過ごしたい。


心からそう思った。











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