ほたるの初恋、消えた記憶
だから、初めましてと言った時嫌な顔をしたのかな。


本当に覚えてないのだから、仕方ないと思う。


21時を過ぎても母さんが戻って来ないので、大地と雄大を先に寝かせた。


じいちゃんとばあちゃんは別棟に住んでいているから、ここには戻って来ない。


父さんが宮東祐吾を送ると言うので、私も一緒に行く事にした。


後部座席に宮東祐吾と二人で座る。


「叔父さんから聞いた。ほたるが交通事故で10年前の記憶がないことを。」


頷くと。


「無理に思い出せとは言わない。ほたると過ごした時間を俺は覚えているから。」


そして、宮東祐吾こんな事も言った。


「又新しい関係を作れば何も問題ないし、でも、宮東祐吾の呼び方はやめてほしい。」


まぁね。


フルネームで呼ぶのはどうかと思ったけど、呼び方が分からなくて。


祐吾でいいからと言われたけど、呼び捨ては勘弁してほしいです。


「健斗は呼び捨てなのに。」


健斗とは長い付き合いだし、親友だし。


「じゃ、祐吾君からでお願いします。」


宮東祐吾がクスクス笑った。


父さんにおまえら仲良しじゃないかとからかわれたけど、仲良しなんかじゃない。


高台のお屋敷の大きさに驚いた。


こんな大きな屋敷に宮東祐吾一人で住むだなんて、淋しすぎる。


「心配ひなくても大丈夫だから、運転手の青木さんと家政婦の七海さんがいるから、一人じゃない。」


うん、分かった。


だけど、切なくて顔があげられなかった。


だって、一人はやっぱり寂しすぎるもの。



















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