ほたるの初恋、消えた記憶
父さんが車で空港まで送ってくれた。


元気に帰って来いと、私の肩を強く叩く。


父さん、痛いよ。


行ってきます。


隣の座席に同じ年くらいの男の子が座った。


彼も北海道へ一人旅らしい。


彼は来年北海道の大学へ入学が決まっていると言う。


頭が良さそうだな。


きみは何をしに行くのと聞かれ、好きな人の思い出の場所を訪ねるつもりだと話した。


女の子の一人で本当に大丈夫と言われてしまう。


ごめんね、意地悪な事を言って。


「きみが泣きそうな顔をしてたから、心配になったんだ。」


私は泣きそうな顔をしてるの。


自分では分からなかった。


この旅行で祐吾を忘れようと思っているのか、違う。


祐吾が私を忘れてしまったから。


今の祐吾に私は必要ないのではないか、と思えてしまった。


私はそんなに強くない。


祐吾を諦める為の旅にしたいと思ってるのは確か。


だって、初恋は実らないものだから。


綺麗に忘れられたらいいのに。



































< 160 / 187 >

この作品をシェア

pagetop