ほたるの初恋、消えた記憶
ほたるに泣かれるのは困ると、祐吾が抱きしめた。


だって、悔しい。


祐吾がいなくなってから誠也さんとは毎日会っていたのに。


ずっと騙されていたと思うと悔しくてたまらない。


誠也さんの顔なんか見たいないよ。


兄さんはあの家に来てから、自分を捨て家族の為だけに生きて来たんだよ。


悲しいとか嬉しいとか楽しいとかの感情まで捨て、宮東家の為に尽くして来た。


それは悲しいくらいに必死で、俺はそれに甘えて来たんだ。


本当にごめんなと祐吾が切ない顔をする。


祐吾にそんな顔をさせたくなんかない。


宮東家の事は知らないし、知りたくもないけど、二人が苦しんで来た事は理解したいと思う。


誠也さんの話も聞かないといけないんだね。


私はまだ子どもだから、大人の汚い世界を知りたくもないけど、祐吾を理解する為には知らなくてはいけないと思った。


だから私も大人にならなきゃね。


宮東祐吾の全てを知って、祐吾の全てを受けとめたいと思う。


そうしないと前に進めそうにないもの。


恋愛初心者の私にはかなりの難問になるけど。






















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