ほたるの初恋、消えた記憶
宮東祐吾と民宿へ行くと父さんはいなかった。


「もう遅いんだから、部屋の掃除頼むね。みんなが帰ってくる前に、昼食の準備しないといけないし。」


「母さん父さんは。」


「食材が足らなくて、買い出しにいってる。」


母さんが宮東祐吾を見た。


「祐吾君、おはよう。これからよろしくね。」


え、それだけ。


まだ聞きたい事が山のようにあるのに。


「猫の手も借りたいんだから、さっさと掃除して。」


分かりました。


宮東祐吾はやることなんでも完璧で、慣れてるはずの私より早く掃除をこなして行く。


ベットシーツの取り替えも素早い。


何処かで清掃員でもしてたのかと思うほどだ。


10部屋の掃除を簡単に済ませてしまう宮東祐吾に、驚きを隠せなかった。


「なんか腹がたつわ。」


私の声に宮東祐吾が振り返った。


「何が、うん、どうしたの。」


その余裕に腹が立つんです。


心の声が出てたみたいで、宮東祐吾がわらった。


「ほたるといると楽しいよ。」


《ほたるといると楽しい》


何処かで聞いたような。


何処だったか、思い出せないけど、とても懐かしい感じがした。


「綺麗になったね。お客様が帰って来たから、昼食の準備手伝って。」


広いダイニングに行くと、多分母さん同級生と思われる人たちがいた。


やっぱり母さんは若く見えると思う。


一人の女性が近づいて来た。


「もしかして、ほたるちゃん?」


頷くと可愛いと抱きつかれた。


宮東祐吾が止めに入ってくれる。


「お客様すみませんがほたるが驚いていますので、ハグは止めてもらえませんか。」


イケメンの宮東祐吾に注意されたお客様の顔が真っ赤になった。


お客様が怒ってないことに一安心。


母さんが近づいて来た。


怒られるかな。


「久子やり過ぎだよ。久子は母さんの親友で、中高と一緒だったの。」


いつの間にか私の回りには、母さんの同級生が集まってきて、何故か質問責め。


宮東祐吾を彼氏だと勘違いするし。


宮東祐吾と結婚?


何でそうなるかな。


あぁ、そうだった。


母さんが父さんと結婚したのは16才の時だったから。


そう思われても仕方ないか。


嫌々違うだろうが。


一人でアタアタしてる私を見て、宮東祐吾が笑っていた。












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