ほたるの初恋、消えた記憶
「ほたる、携帯鳴ってるよ。」


誰かな?


知らない電話番号だ。


祐吾が私からスマホを取り上げた。


なんで、祐吾が出るの。


「永田和臣って、誰?」


永田和臣なんて知らないよ。


な、が、た、か、ず、お、み?


思い出した!


祐吾からスマホを奪い返した。


そうだった、北海道で会った永田君に電話番号をおしえたんだっけ。


すっかり忘れてました。


うちが民宿やってる事話したら、高校卒業後泊まりに来たいと言ったのを今思い出したよ。


祐吾にこの浮気者と言われたけど、そんなんじゃないし。


永田和臣は友達です。


「あのね、ほたるが友達だと思っても向こうは違うんだからね。」


はい、どういう意味でしょうか。


はぁ、とため息つかれたけど、本当に友達なんだからね。


「祐吾がかわいそうだわ。」


健斗おかしな事を言わないでよ。


祐吾を見ると、怒ってるみたいだけど。


ちょっと待って下さい。


私が何をしたと言うのでしょうか。


春休みの民宿のお客様が増えて喜んだのに。


永田和臣君が電話を切る前に、ほたるに会えるのを楽しみにしてるからと言った。


え、それってもしかして、そうなの。


祐吾に鈍感にもほどがあると言われた。


そんなぁ、はっきり言ってくれないと分かりません。


永田君に今さら断れないし。


祐吾、ごめんね。


祐吾がはっきりと言った。


「高校卒業したら、この民宿に就職するからね。」


もう、ほたるを逃したくないんで。


逃げたりしないよ。


「祐吾がかわいそうになってきた。ほたるは止めた方が言いかもね。」


美幸さん、ひどいですよ。


永田和臣君は少し祐吾に似た素敵な青年なのにな。


「永田和臣君は私に紹介してね。」


なんで、そうなるかな、美幸さん。


美幸は本当は健斗が好きなんじゃないのかな。


無理して強がってる気がした。











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