ほたるの初恋、消えた記憶
長い長い学園長の話を聞き来賓の人たちの話が続いた。


祐吾の父親は来ていない。


誠也さんたちの姿も見えないけど、どうしたのかな。


祐吾は平然としてるし。


私は落ち着かないと言うのに。


担任の前田に最後ぐらいは真面目にやれと注意されてしまった。


「卒業生代表、宮東祐吾。」


さすがです。


その時、式場のドアが開く。


誠也さんと一緒に入って来たのは、祐吾の父親だった。


祐吾、お父さんが来てくれたよ。


祐吾は壇上で背中を向けたままだから、お父さんが来たことが分からない。


祐吾の背中に向かって思わず叫んだ。


「祐吾、お父さんが来たからね。」


「ほたる、静かにしなさい。」


又、前田に注意されてしまった。


「ほたる、かっこいい!」


ありがとう、美幸。


祐吾が背中を向けたまま、右手をあげた。


祐吾が堂々と卒業生代表の挨拶を終えると、何故か拍手がわきおこる。


最後の海野ほたるを愛してますはいらないと思います。


はぁ。


祐吾が何を考えてるのか分かりません。


恥ずかしくて顔をあげられないよ。


「ほたる愛されてるね。全校生徒の前で愛を語るだなんで、祐吾は最高だよ。」


「俺は恥ずかしくて、とても言えないよ。」


健斗が正しいと思う。


祐吾のバカ。


お父さんもいるのに。


席に戻ってきた祐吾が耳元でありがとうと言った。


おせっかいしてごめんね。


でも、本当に良かった。









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