ほたるの初恋、消えた記憶
慌てて玄関から家に入ると母さんがソファに座って、頭を抱えていた。


何があったの。


「父さんは?」


「それがね、父さんバイクでこけて足の骨を折って、全治3ヶ月なのよ。」


「父さんは何処?」


「今は病院にいる。複雑骨折で手術したの。」


病院へ行かなきゃ。


消灯時間過ぎてるから、病院は駄目だと言われた。


母さんが頭を抱えてたのは、これからのシーズン民宿のお客様が増える。


常はこじんまりとやってるけど、夏場はもう一つの建物も使って、団体のお客様の受け入れをしたりして、すでに予約も入ってるのだ。


どうしたらいいの。


父さんがいないと買い出しが出来ない。


この町には小さなスーパーしかないから、父さんが肉と魚は隣町に買いに行ってる。


母さんは免許を持ってないし、じいちゃん車に乗るのをやめてしまった。


今週末も団体のお客様が入っているから、
高校を休んで手伝いたくても、買い出しにはいけない。


夏場はアルバイトを頼むけど、まだ学生も学校あるし。


どうしたらいいの?


祐吾が母さんの前に座った。


「買い出しの車はあるんですよね。」


軽トラもあるし、ワゴン車もある。


「青木に買い出しを頼みましょう。ほたると俺が一緒に行けば何とかなると思うんです。」


そんな事頼めないよ。


青木さんは祐吾専用の運転手さんだし、宮東家で雇ってる人なんだから。


母さんが返事に困ってると。


「アルバイトの時給はいくらですか。」


1000円だと答えると、青木を時給1000円で雇ってくださいと言われたけど、青木さんに聞かなくても良いのかな。


母さんはその気になってるけど、なんか心配だよ。


何処までも青木さんに甘える事が辛かった。

























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