ほたるの初恋、消えた記憶
次の朝青木さんが迎えに来ると、祐吾は今週中高校を休むと聞かされた。


「車は良いので、歩いて行けますから。」


青木さんは祐吾に叱られるから駄目だと言う。


青木さんはいくつなのだろうか。


青木さんに年齢を聞くと、22才だと答えてくれた。


思ったよりかなり若い。


青木さんの横顔が祐吾と似ていて、ドっきっとした。


「私の顔がなにか。」


「すみません。じろじろ見て、青木さんの横顔が祐吾に似ていたから。」


青木さんは前を見たまま呟いた。


「祐吾様とは異母兄弟になるので、似ているんです。」


異母兄弟って、つまり母親が違う兄弟の事だよね。


「僕たちの母親は宮東家の家政婦をしていたんです。これでお分かりになりますよね。」


分からない。


祐吾の母親と結婚する前に、青木さんのお母さんと恋愛してたと言うのか。


理解に苦しむけど、祐吾に兄弟がいる事に何処かで安心した。


「こんな言い方失礼だと思いますが、祐吾の側にいてあげて下さい。一人ぼっちの祐吾は可哀想です。」


「大丈夫ですよ。祐吾様を支える為に僕はいますからね。」


どんな状況なのか分からないけど、弟を祐吾様と呼ばなくてはいけない、青木さんの立場が痛いほど分かってしまった。


よく分からなくても涙は出るものなんだ。


祐吾に早く会いたいな。


いつも俺様で命令口調で、それでいて凄く優しくて、本当に調子狂うんだから。


祐吾早く帰って来てね。


多分今、祐吾はこの町にはいない。








< 36 / 187 >

この作品をシェア

pagetop