ほたるの初恋、消えた記憶
リレーなんて無理無理、無理に決まってるでしょ。


体育はほとんどサボってるし、足がつって走れません。


ちょっと待って!


黒板すでに書かれていたメンバー。


美幸がドップで菜々子で、健人で次が私って、アンカーが祐吾は分かるよ。


私以外はいつもリレーメンバーだし、アンカーはトラック2周らしいけど、祐吾は余裕らしいです。


お願いだから私の話を聞いてください。


幼稚園の運動会はいつも一位だったから、大丈夫だと菜々子さんに言われた。


幼稚園の運動会なんて、10年以上前の話で、覚えてないよ。


幼稚園の運動会はリレーでなくて、おいかけっこだと思うけどな。


担任の前田まで、頑張れば大丈夫だなんてのんきな事を言ってるし。


頑張れるものなら頑張りたいよ。


だけどね、走れないんだ。


10年前の足と腰のケガで、腰にはボルトがはいったままで、走ると足はつるし、びっこひいてしまうのに。


みんな分かってるのにひどいよ。


「無理に走らなくてもいい。歩いてもいいから、俺にバトンを渡してくれればいいんだよ。」


そんなのリレーじゃないじゃん。


美幸が私の肩を叩く。


「あのね、クラスのみんなはほたるに参加してほしいと思ってるの。いつも足のせいにして逃げてるから。」


だって、私が出たら負けちゃうんだよ。


一位になれないんだよ。


そんなのみんなに悪い。


え、振り返るとみんなが私に向かって、ピースサインした。


参加する事に意義あると言う。


「ほたるはいつも最初から諦めて、自分は参加しない方がいいと思ってるみたいだけど、それ間違ってるから。みんなで参加するから意味があるんだよ。」


菜々子さんがそんなふうに思ってるだなんて、思いもしなかった。


これでほたるリレー参加決定だな。


どうして又、菊地が1組の教室にいるの。


ほたるの顔を見ないと一日が始まらないからだなんて、菊地先生セクハラですよ。


菊地の顔なんて見たくないけど、みんなの気持ちが嬉しくて泣きそうなのを必死にこらえた。


足が悪いことを理由にして、体育ずっとサボってきてんだよね。




















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