ほたるの初恋、消えた記憶
今日から大学のテニスサークルの人たちが宿泊する為、母さんに頼まれて部屋の掃除をしていると、菊地が部屋にそっと入ってきたので驚いた。


「驚かせてごめん。」


「菊地先生、何かありましたか。」


「いや、たいした事ではないが、ほたるは祐吾と付き合ってるのか、聞きたくて。」


そんな事聞くために部屋まで来たんですか。


菊地の気持ちは薄々感じていたけど、どう答えて良いのかも分からないし、相手は先生だし。


「俺は。」


ちょっと待って!


何か言われても答える元気もない。


「菊地先生は生徒思いのよい先生で、尊敬してます。それだけじゃ駄目ですか。」


祐吾が部屋のドアの前に立っていたのが見えた。


「ごめんな。」


はぁー。


今日何度目かのため息。


祐吾は部屋に入って来なかった。


菊地先生の後を追ったのだろうか。


私は狡いのだ。


菊地の気持ちを知りながら、それに答えようとしない。


祐吾の気持ちや健人の気持ちも分かっているのに、自分をごまかしてる。


正直な気持ちは、誰か好きと言う事がはっきりしない。


ドキドキしたり、胸がきゅんとしたり、その人の為に綺麗でいたいとか。


そんな気持ちになるまでまだ時間がかかりそうだ。


母さんに呼ばれ急いで玄関に行くと、大学生らしい人たちがいた。












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