ほたるの初恋、消えた記憶
昼休みは約束どおり健斗が焼きそばパンを買って来てくれた。


宮東祐吾は私から奪った弁当食べてるし、何を考えてるのか、さっぱり分からない。


美幸は宮東祐吾と机を並べて、何だか楽しそうにしてるし。


私のイライラはおさまらない。


「ちょっと、お弁当返しなさいよ。」


「やだね。」


「キャー!私の焼きそばパンが。」


宮東祐吾からお弁当を取り返そうとすると、焼きそばパンまで取られてしまった。


美幸はゲラゲラ笑ってる。


「ほたるに天敵がいたなんて、かなりおもしろいんだけど。」


「宮東、止めろよ。ほたるにこれ以上何かしたら、俺が許さない。」


宮東祐吾がニヤリと笑った。


「健斗はほたるのナイト役のつもりか。真実を隠してる癖に。」


今、なんて言ったの。


お弁当と焼きそばパンを取られて拗ねてたから、二人の会話が聞こえなかった。


美幸に聞こうとして近づくと、美幸の顔が真っ青で、美幸大丈夫。


「美幸、気分悪いの。」


「ごめんね。」


何に対してのごめんなの。


美幸は何もしていないのに。


「ほたる、俺の焼きそばパン食べていいから。」


健斗が美幸を腕をつかんで教室から出て行った。


宮東祐吾が何かしたんだ。


「健斗に何をしたの。」


「何もしてない。何かしたのはあいつらだろ。」


健斗と美幸が何をしたと言うのだろうか。


私のいないところで二人で話してるのを何度か見かけたから、健斗は美幸が好きなんだと思った。


7才前の記憶が定かではないから、本当の事は分からないけど、交通事故で病院へ運ばれ目が覚めた時、健斗がいたのは覚えている。


本当は交通事故後の記憶も曖昧で、左足を骨折し松葉づえで学校へ通った事は覚えていた。


健斗がいつもランドセルを持ってくれて。


思い出そうとすると頭がズキズキする。


「おい、大丈夫か。」


優しい声に顔を上げると、そこにいたのは健斗ではなくて宮東祐吾だった。


どうして、そんな切ない顔で見るの。














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