ほたるの初恋、消えた記憶
今年もほたるの誕生日はやったと言われた。

「腕にしてる時計はどうしたの?」


これは、確か父さんにもらったと思う。


今年の誕生日会を必死に思い出そうとすると、頭が痛くなった。


頭を押さえていると、祐吾が近づいてきて、大丈夫だから無理に思い出さないと良いと言う。


もしかして、私は酷い病気なのかも知れない。


「ほたる泣かないで、だから頭の検査をしようよ。」


だって、怖い。


みんなの事も忘れてしまうの。


事故の後、全てを忘れてしまった。


あの恐怖が甦る。


祐吾が優しく抱きしめてくれた。


「その時計は美幸がくれたんだよ。ほたるが待ち合わせの時間を忘れるから。」


ごめんね、美幸。


待ち合わせの時間を忘れても、美幸は怒らなかった。


いつも心配したんだからねと。


あの事故の後、健人はいつも心配して一緒にいてくれたんだ。


みんなにからかっても、俺が一緒にいたいからと言ってくれた。


高校を決める時も健人と美幸は勉強が出来るのに、私と同じ緑が丘へ行くと言うから、私に合わせなくても良いと言っても聞いてくれなくて。


10年間二人はずっと一緒にいてくれたんだよね。


本当に感謝してもしきれない。





















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