ほたるの初恋、消えた記憶
10年前祐吾とどんな遊びをしたのか聞くと、祐吾が話してくれた。


東京から来た祐吾にとって、この町は新鮮で楽しかったけど、みんなが自分に興味をもって近づいて来るのが怖かったらしい。


ほたるだけは違ったと言う。


お屋敷に遊びに来たいとも言わなくて、祐吾を山や川に誘ったらしい。


魚を手で捕まえたり、大きな木に登ったり、ターザンみたいに木に綱をかけて川を渡ろうとしたらしい。


失敗して川に落ちたらしいけど。


セミが怖くてセミ取りが出来なかった事や、カブトムシの幼虫を祐吾の手のひらにのせたり、しまいには雨蛙を祐吾の服の中にいれたとか。


もういいです。


それ以上聞くのが怖い。


女の子らしい遊びを一つもしてないなんて、恥ずかし過ぎる。


でもね。


祐吾はそんな私だから友達になれたと言った。


ほたると過ごした時間は凄く楽しくて、今でも忘れられない。


なのに、ごめんね。


何も覚えてないなんて、悲しすぎるよ。


祐吾は大丈夫だからと何度も言った。


祐吾と過ごしたい時間を思い出せないけど、祐吾が覚えていてくれるなら、それでいいや。

















< 81 / 187 >

この作品をシェア

pagetop