ほたるの初恋、消えた記憶
もう無理。


宮東祐吾の竹刀が半端なく打ち込むから、ひたすら逃げまくった。

しまいには宮東祐吾が大笑いするし。


「ほたるは逃げるのがうまいな。」


それは嫌みですか。


もうくたくたですから。


今日の健斗はおかしい。


私に近づこうとしないなんて。


「健斗と喧嘩でもしたのか。」


菊地が何でそんな事を言うの。


「喧嘩なんかしてないよ。」


「なら、いいけど。ライバルがいなくなるのは淋しいからな。」


ライバル?


菊地のライバルが健斗。


菊地は三段だから、健斗には楽勝でょ。


宮東祐吾が現れてから、何かがおかしい。


「ほたる、打ち込んで来い。」


「菊地とはやらない。」


「どうしてだ。」


「菊地は手加減しないから、やだよ。」


菊地から逃げまわり、段差につまずいて、こけそうになるが。

痛いはずが痛くない。


健斗に抱きかかえられていた。


「ほたる走り回ると、右足を痛めるから駄目だぞ。」


そうだったね。


ごめん、健斗。


10年前に骨折した右足は元に戻ったけど、走ると足がもつれて転びやすい。


別に後遺症ではないと思うけど。


菊地が悪かったと謝って来たから、ジュースを買ってもらった。


菊地は私にかなり甘い。


お仕置きとか言ってはいつも苦手な勉強見てくれるし、ジュースやお菓子もくれるし。


もしかしたら、本当に菊地は私が好きなのかも知れない。


やだ、自分で自分がキモいと思った。










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