*武士の花*~花は桜木、人は武士~
「七重!よぉ頑張ったなぁ!!」


渉の横に行き、山崎が言う


反応のない渉の手を山崎が握る


「ひゃあ!!」


驚いて手を振り払う


「七重!?どないしたん?」

「だ……誰?」


山崎が渉の様子に気づいた


目の前で手を振る


「七重!?」


返事がない




「嘘や」


山崎が青ざめる


もしかしたら……目も耳も……



「烝さん?」



ガバッ


山崎が渉を抱きしめた



「烝さんって…匂いがないよねぇ」






山崎は、泣いていた





「今、朝かなぁ?」


渉の肩で、山崎が頷くと


「やっぱり!?よく寝たなぁって思ったんだけど、真っ暗で……
鳥の声もしないし、自分の動く音もしないし、なんだか……さみしくて」


へらっと笑った


「烝さん…怒ってる?」


頷く


「ごめんなさい
でも、初めてうまく出来たから!
満足なんだよ!
桂を逃がしたのは、悔しいけど……」


ペシ と渉の後ろ頭を叩き「アホ!!」


「今、アホって言ったでしょ!?」


頷くと

「雑なんだよ!本当!!
もっと女として扱って貰いたいな!!」

ムスッとした


「山崎……医者に診て貰おう」

頷く


「お?改心してくれるの?」


沖「一時的なものかも!お医者を呼んできます!」


頷く


「そう?烝さん、無理しないでね?」


渉が山崎の顔を覗くように、手をやる


「なんで、泣いてるの?」


涙で、声が出せない山崎は、首を横に振る


「意外……烝さんって、泣き虫なんだ?」




渉は、のん気に笑って言う




そして、医者は



治らないだろうと簡単に言った







「お腹すいた……何か作りたい」








「記憶力と学習力は、あるから!!」










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