*武士の花*~花は桜木、人は武士~
桜が咲き始めた


屯所には、辰巳と老人が渉を訪ねてきた

渉に会わせる前に、目と耳の事を話した



老「ここに置いておくのか?荷物になるぞ?儂らが面倒を見る」


近「こちらで、不自由ながらも、楽しそうにやっております
それに、恋仲の者と引き離しては可哀想です」

辰「うえっ!!恋仲!?
そうか!土方とか?」

土「山崎だよ」

辰「!!!!!引き裂いてやる!!!!」


あぁ… 仲悪かったっけか



「失礼します」


近藤さんの部屋に入るなり、クンクン


「辰巳? ……クソじじい?」


素晴らしい嗅覚だと、褒めてやりたいが

老「口の悪さは、どうにもならんのか?」


聞こえない



辰「……本当に聞こえないんだな」


老「どうやって会話するのだ?」


土「要件は?」

老「将軍様の事をみてもらいたい」


……見えねぇって言ってんのに



近「それは、できません
試してはいませんが、心身の負担を考えると、させたくありません」


辰「おい!山崎でいいのか聞いてくれ!
なんなら、俺が誰かいい人を探すって言ってくれ!!」


ため息をひとつつき

渉の手をとる

『先はみえるのか?
辰巳が山崎でいいのかと聞いている』

と手に書いた


「目が見えないから、見えないと思ってたけど、やってみるよ
それと、辰巳?烝さんと仲良しだろ?」


クスクス笑って、辰巳がいる方に微笑む



「よし、じじいが棺桶に片足突っ込むのを見るより、辰巳の先を見てやろう!
辰巳、近くに来て!!」


バシッ


辰巳より先に老人に叩かれる


「クソじじい……」


頭を擦りながら、舌打ちをする


そして……


辰巳の胸元に右手をやる




目を瞑り、集中する




見えるのか……?



左手でうっと苦しそうに、自分の口元を抑えた


近藤さんが「もうやめなさい!」と肩を引くと、ぐにゃりと倒れてきた

左手には、血が

鼻からは血が

近藤さんが紙を出し、血を拭く


辰「大丈夫かよ?」


医術の心得がある辰巳が渉を見る


「ごめん…… なんも……みえ……ない」



渉は、近藤さんに抱かれたまま気を失った


近「無理をさせたね……」


まるで、我が子をあやすように


優しく声を掛ける



聞こえないんだっての




土「おわかり頂けましたか?
目も耳も治らないと言われました
お引き取り下さい」




















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