*武士の花*~花は桜木、人は武士~
桜天神は、どんな客でも2回までしか
会わない

つまり、馴染みの客がいない

女なら、生娘だが

男だとバレない為の女将の知恵







「土方はんやないどすか?」




2人きりでも、ちゃんと女らしく振る舞う




「ふっ 最近、屯所に来ねぇから
会いに来たぜ!?」

「まぁおおきにどす」



サッと立ち、桜天神のそばにいく


「しきたりは、守ってもらわんと困りますえ?」

にこっと笑い

シッシッと手を払う


ガシッ


強引に抱きしめた


前に帯があるから、邪魔だが
思ったより、華奢で驚いた


「何のつもりどす?」

「俺を選べ!
迷いや葛藤や悩み事は、俺が半分背負う
1人で頑張るな!
浪士組に来いよ!慶太郎もいる!
お前が、ちゃんと笑っていられるように
俺がお前の力になる!だから…」


言い終わる前に、桜天神の顔を見るんじゃなかった


「いらねぇよ…
力なんて……
俺は…誰も選ばねぇ」


その顔は、全くの無表情で
とてつもなく、冷たい目をしていた

俺を黙らせるのに、十分な威力だった



何も言えなくなった代わりに



俺は、しばらく桜天神を抱きしめていた



「もう、来んな……
屯所で会うんだし、こんなことされて
なんか、身の危険感じる」


「は?誰が、男を襲うかよ!!」


「だったら、放せ!!
客には、触らせない主義なんだよ!!」

「喋り方……」

「土方はんのせいどす!!」

「ぶっ急だな」


いつもの調子に戻って、安堵した




ちょっと、いや、結構



嫌われたかもって思ったから







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