*武士の花*~花は桜木、人は武士~
烝「なんでや……」

渉が出て行き、さみしくなった部屋

山崎さんが、ポツリ


弘「山崎さんといたかったんです
副長のかわりとか、渉のかわりとか
さみしさを埋める為じゃなく
山崎さんを必要としていたんですよ
だって……
ずっとそばにいるって、約束したんでしょ?」


沖「どうして治ってるってわかったの?」


弘「避けられてるって、言ったから
見えてるってわかりました
それに、沖田さんが咳してるって心配してたから」


烝「俺は、なんも気づかんと…」


がっくりと肩を落とす山崎さんに


弘「アイツは、山崎さんのこと
好きでしたよ
まだ、見えないとき
火を使えたら、お嫁さんになれるかなって、訊かれたから……」


沖「僕が渉の目や耳になってあげるって
言ったら、山崎くんがいるから、僕は嫌だって言われたなぁ」


烝「俺… 約束したんやった
七重の前から、消えないって……
せやのに……」





唯一、自分を本当の名前で呼ぶ山崎さんを



アイツは、臆病で内気なくせに

それでも山崎さんに恋しようとした?

いつの間にか好きだったのかな?


2人は、想い合っていたのに



お互いの心を知ることなく、負けたんだ


自分の弱さに勝てなくて


離れることを選んだ














渉のあの顔は、七重が死んだ

あの時と同じ顔




七重も渉も、アイツの中で死んだんだ













新しい名前を貰ったからって、生まれ変わる訳じゃないだろうけど


「俺… 桜になる」

あの時は、七重の代わりに桜になったよな


今度は、忍


アイツが生きる為に選んだなら


とめられない












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