*武士の花*~花は桜木、人は武士~
~渉~



新選組からの帰り道

鍋を持ち、先を歩く烝さんについていく

渉「烝さん……」

烝「なんや?」

特に用があって、呼んだわけではない


渉「……」

烝「ちゃんとおるで?」

俯いた顔を覗き込んで、笑ってくれる

俺も笑って返す

渉「ちょっと待ってて!」


店に鍋を戻して、烝さんと人気のない所に行く

渉「烝さん… 約束覚えてる?」

烝「うん」

渉「だったら… 早く貰ってくれない?」

烝「七重…俺は、体が目当てやない
七重の心が、ちゃんと俺を意識せんといやなんや」

渉「してるよ!わからない?
烝さんが、そばにいてくれなくて、どんなに辛かったか…
烝さんが、好きです!」


真っ直ぐに気持ちを伝えた

でも……


烝「アホ……俺に逃げてるだけやろ?」


そんなふうに、とられてしまう


烝「蓮見に会ってん」

忍を破門になった理由を聞いたらしい

渉「関係ないよ?
ヤケになってるわけでもないし、本当に
烝さんのお嫁さんになりたい!」

烝「……ほな、男でおるのやめや?」


京の人は、渉と桜の顔を知っている

桜が死んだとなれば、残っているのは

男の渉……

わかってて言うんだから、ずるいよ


渉「烝さんの休み、いつ?」


烝「明後日や」


渉「明日、おソノの様子見に行く
明後日は、1日一緒に過ごしましょう!」


烝「ほな、行き先考えとく」

渉「昼前には、屯所に行きますね!」



嫁入りに、焦ってる訳ではないけど

ひとりが嫌だ……


消えないと約束してくれた


すべて知ってて、それでもそばにいてくれる


烝さんを好きになることは、絶対ないと思ってたけど


今の俺は、思いの外… 乙女だと想う


烝さんのお嫁さんになるべく、女になろうと






決心したのだから





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