*武士の花*~花は桜木、人は武士~
~土方歳三~


暇さえあれば、川原に行く

考え事も川原がいい

屯所が移転してから、渉が来なくなった


忙しいのだろう



今日も川原へ













え?











前にも見たな……



「おい!!風邪ひくぞぉ!!」


ピクリとも反応しない

嘘だろう…


バシャバシャと川に入る

9月ともなると、川の水が冷たい


「渉!!」


抱き起こし、顔を見ると青白い

唇は、紫色

一体どれだけの間、川にいたのか!?

「しっかりしろ!!」

かろうじて、浅いが息はある

ぐっしょりと濡れた、着物分程の重みしか

伝わらない体を抱き上げ

町を走る


「おい!!医者は、どこだ!?」

「!!!こちらです!!」


青白い渉を見て、町人が案内してくれた


その医者は、以前に渉の目と耳が治らない

そう言った医者だった


「死なせんじゃねぇぞ!!!」

「ひぃぃ」


しっかり働いて貰う為、少々脅かした


それなのに、医者は言った


「あとはこの子次第ですな」



なんとなく信用できなくて、渉を抱えて

置屋へ


女将「土方の旦那、すまないね……
少し、預かってくれないかい?
ちょっと訳ありで、この子をここに置いとけないんだ
目が覚めたら、連絡おくれ」



どいつもこいつも……




俺は、屯所に連れて帰った

近「一体どうしたんだい!?」

土「さぁな……」

烝「副長、今のところ熱もありませんし
問題ないかと思います
かなり体を冷やしたようなので、油断できませんが…」

土「そうか……悪いが、看病してくれ」

烝「……はい」



山崎の返事に間があった





土「山崎」

烝「はい、なんでしょう?」

土「立ち入って悪いが…お前ら
……上手くいってねぇのか?」

烝「俺達は、終わりましたよ」

土「そうか… 看病は、頼むな?」

烝「はい」



山崎は、終わったなんて言い方をしたが

まだまだ未練のある表情だ


渉…


なんで、幸せになってくれねぇんだよ














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