*武士の花*~花は桜木、人は武士~
土「では、小栗様
よろしくお願い致します」

小「気にするな
渉未!送ってやれ!」


シュッ


天井から、小栗様の後ろに降りた渉は、俺にペコリと頭を下げた





屯所への道すがら、渉と話がしたかった

本当、コイツは…思い通りいかねぇなぁ


土「なぁ?降りて来いよ」


小栗邸から、屯所まで半分ほどの今…

人気もないので、声を掛けた


……が



冷ややかに俺を見下ろす

しょうがねぇなぁ



よっ   ととっ    よっ



危ねぇ



土「ははっ 久しぶりだ…屋根に上がったのは…」


少しづつ渉へ近づく

大人になると、屋根を歩くのが
案外、恐いものだと知った

もう、2度と上がらないかも

不慣れな動きで、足がヨタヨタする

ガバッ

土「捕まえた…渉……」


抱きしめて思う

あれ?逃げなかったな?

土「先に言うけど、降りる時手伝えよ?」


渉の顔を覗き込んで言うと、呆れ顔で

パクパク

〝だったら、上るなよ〟 だな?

土「お前が降りねぇからだろ!?」

〝俺は、任務遂行している!離れろ!!〟


土「無理……こぇぇ」

必死に渉に抱きついている

情けないけど、本気で恐い

屋根に上がったことを激しく後悔している


ポン ポン  一定の速度


渉が俺の背に回した手が、怖くないよ

そう言ってくれているようだった


やっぱり、中身は渉なんだ

渉…


俺が渉の肩を押し、顔を見る

すげぇ驚いた顔した渉

〝泣くほど怖いの?〟

土「馬鹿!!泣くほど、お前が好きなんだよ!!」

〝え〟

土「知ってるクセに……渉…
お前が男になっても、気持ちは変わらねぇ!!なぁ?お前は?」

〝大嫌い〟

目線を落とし、ボソッと口を動かす

その唇に俺は、唇を重ねる

土「男色じゃねぇぞ!!中身にしてんだからな!!」

意味のわからない弁解をしつつ

人んちの屋根上で、男2人…

何やってんだってくらい、長いこと

口づけしてしまった


〝なんで?〟


土「俺は、お前に惚れてる
お前だって、俺に惚れてるんだろ?
だから、想いがひとつだってわかったからだろ?」

渉は、自分の頬を伝う涙の理由がわからないようだった

だから、それを教えた

土「中身に惚れてるんだからな!?」

誤解招くといやだから、もう一度言った


〝俺は……土方さんのそばにいれない〟


土「なんで…いつも逃げるんだ?」



俯く渉…



〝降りよう…〟


渉に手伝って貰って、恐怖もなく降りれた


渉は、それから1度も振り返らず


かなり早歩きで屯所まで送ってくれた


ペコリと頭を下げ、屋根上を素早く移動して行った



任務か……



俺は、少しでも長く渉といたい

渉は、任務だから俺といた


でも、あの涙は俺を想ってるって

ことだろう??

自意識過剰だけど、想いはひとつ


俺は、信じるしかない





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