*武士の花*~花は桜木、人は武士~
「桜?お出迎えかい?嬉しいね!!」


慶太郎とのやり取りを見られた…


「蒼介はん…」

「さぁ、部屋に行こう!!」


俺の手を取り、パタンと部屋の襖を閉めた



「桜…大丈夫?震えてるよ?」



声が出なかった



「……ごめ……なさっ」



「あの人、桜のいい人?」

「……ちがっ……うっ」 


蒼介さんは、優しく抱きしめてくれて

おでこに口づけをしてきた



「桜、泣いていいよ…
僕が、受け止めてあげる」


こんな時、優しくするのは卑怯だ

あっさりと、涙が流れるんだ

苦しいよ…

辛いよ…



蒼介さんは、何も言わないで、ずっと抱きしめて背中を擦ってくれた


たぶん、ずっと我慢してたから

涙が止まらないんだ


大金を支払い、桜太夫に会いに来たのに

泣き虫のお守りだなんて、申し訳ない…


「蒼介はん、堪忍え…」

「桜、普通に喋っていいよ!
2人なんだし、桜は俺の妻になるんだし」


蒼介さんの笑顔を見たら、凄く心が晴れた


「桜が咲くまで、待ってくれない?」

「え?」

「蒼介さんを好きになりたいの」

「それって……身請けさせてくれるってこと?桜が俺の妻になるってこと?」

「桜が咲くまでに、蒼介さんを好きになる
だから、体は待ってくれない?」

「待つよ!」



どれだけ泣いても、涙が流れてくる

蒼介さんは、困った顔ひとつせず、ずっと

泣きやむまで、優しく擦ってくれた



この人を選ぼう……


この人を好きになろう……





きっと、幸せになるはずだから







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