*武士の花*~花は桜木、人は武士~
~土方歳三~


街中が、桜太夫を哀れんだ

桜は、葬儀の時も、ずっと泣き通しだった



桜が、置屋に戻る前に




声を掛けた




「乗り越えろ!お前は、生きろ!」





辛い時に、こんな言葉は、届くのか?




「土方さん… 刀を見せて下さい」




自害する気か?と思ったが、真剣な目

俺は、刀を差し出した


桜は、俺の刀を受け取り

ぐるりと刀を見回してから

ポロポロと、涙を流した



「はい、お返しします」



なんだったんだ?



「土方さんに、初めて会ったとき
土方さんに一目惚れしたんだ
俺の初恋です
だけど、諦めようと思って、蒼介さんを利用したんです
そのせいで… こんなことになるなんて」


泣きながら、笑って

そして、気持ちを教えてくれた

そっと抱きしめた

店の前で、いけないと思いつつも

とめられなかった


「俺を気持ち悪いって、突き放せよ
もう、立ち直れないくらい、傷つけてよ
優しい言葉なんて、かけるな!!
2度と、こんなことしないで!!」



ドン と押され、そのまま店の中に入っていった




これ以上、傷つけられるかよ




惚れた相手が、他の男の為に泣いてるのに




好きだなんて、言えねぇよ









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