近づく距離
「今日の日直は、橘か。ちょっといいか」二人で話していたら担任に呼ばれ今週の保護者会の資料作りを頼まれた。帰宅部だし、帰ったらゆうくんのことを考えてしまいそうだからそれを即承諾した。まなは彼氏とデートの日だからのんびり一人でやるしかないな。
***
「こ、こんな量があるの…?」
思わず漏れる心の声。担任から渡された資料は私の想定外の量だった。
「仕方ない、やるしかないか」
資料を順番に重ね、ホチキスで留めていく。全て終わったときには結構な時間が経っていて、雨も降っていた。
「雨か…雷の鳴らないうちに帰ろう」
担任に資料を届け、帰り支度をする。その時傘を忘れたことに気づいた。
「こんなに降ってるのに傘忘れるなんて…濡れて帰るしかないよね…」
ため息を漏らしながら下駄箱まで行くと、見知った人物が壁に寄りかかっていた。
「ゆうくん…?」