幼なじみはアイドルの先輩
ナイフが地面に転がり、そのナイフを足で蹴った。


警察官数人が駆けつけて男性を取り押さえた。


その様子を私はうずくまりながら見届けた。


こんな一大事にドラマのような奇跡が起こるとは。


数秒のうちにナイフが手から離れた。


でも、さすがに左手……手のひらあたりが痛くてどうにもなりません。


こんな時に限って持ってるのは白いハンカチだ。


押さえてるけど、このハンカチはもう使いものにならないな。


「杏ちゃん!!杏ちゃん!!」


みんな私の元に駆けつけた。


「杏ちゃん!立てる?」


「このままで……」


様子を見に行ったプロデューサーさんと東子ちゃんが疲れきった表情で戻ってきた。


「申し訳ない」


「いえ……」


「東子ちゃんが突き飛ばされて軽く足を擦りむいた」


「はい……」


痛みで喋る気力も沸かない。


東子ちゃんとプロデューサーさんがハンカチを私に。


揃いも揃って白です。


洗って返さなきゃいけないけど、使い物になるかなあ。


救急車が思いのほか早く到着した。


少し応急措置して立ち上がり、歩いて救急車に乗り込んだ。


周囲は騒然としてる。


たぶん情報は瞬く間に広まるだろうなあ。


杏子さんに謝らんといけない。


見習いをバカにしてすいませんでしたとね。


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