幼なじみはアイドルの先輩
「それでもあたしは選抜祭立候補するよ。立候補するからには2連覇して私の代でアクアとの距離を離していきたい。それに、1位になったらみんなに言いたいこともあるしね」


みんなに言いたいこと……。


ひかるさんの口からついに出てしまった。


努さんの情報が……情報がどんどん現実に……。


「杏は、選抜祭出ないのが性分に……あらら!杏ちゃん、米粒口についてるぞ〜」


ちょっと真面目な空気が流れかけていたひかるさんの部屋が一気に和んだ。


「取らないで!あたしが取ってあげる」


ひかるさんが私の口についてる米粒を取ろうと顔を近づけるけど、どうして私は拒絶するんだろう。思わず後ずさりしてしまう。


ひかるさんは負けじと何とハイハイで私に迫ってきます。ファンがこの光景もし見たら鼻血モノだよね。


結局はひかるさんに米粒取ってもらったけど、取る直前に舌を舐め回したのにはどんな意味があったのだろうか。


「かなり脱線したね。とりあえず今2人で弾いてみようよ」



やっと本来の目的に遠回りだけど戻ってきた。


「綺麗に人生は歩まれないってことだよ。あたしは挫折大好きだからね。これからもっと大変だけど、やってやるよって感じ」


お茶を口に含み三味線を手に持つ。


ひかるさんの目は三味線よりずっと遥かな世界をすでに見据えている。


これだけ匂わせればそういうことなんだろうね。


今はただ傍観者でいますよ。


でもね、みんなに万雷の拍手をいただけるまで私の前からひょっこりいなくならないでくださいね。


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