彼は高嶺のヤンキー様2(元ヤン)



「どうしたの?こんなところまで来て?A組は、別館なのに。」



気さくな彼女の問いかけに、トホホな気分で答える。



「それがね~英英辞書が行方不明になっちゃって。」

「行方不明?」




そこまで言って気づく。





(これ、ラストチャンスじゃない!?)


貸してもらうための!?





思い切って頼んだ。




「吉田さん、英英辞書貸してくれない?」

「いいよ。その代わり、風邪で休んでた分の委員会の連絡ノート貸して。相方の男子が、居眠りしてて書いてなかったのよ。」

「もちろんだよ!返す時に持ってくるね!」

「OK!今持ってくるね。」




笑顔で言われ、ホッとした。

暑いせいか、みんなだるそうにムスッとしていたから、彼女の笑顔でホッとできた。

教室に入った吉田さんが、速足で出てきた。

分厚い書物と一緒に。




「おまたせ!はい、ドーゾ。」

「ありがとう!本当に助かったよ~」

「ここまでこなくても、ご近所で借りれなかった~?」

「あはははーなかなか使わないから、みんな持ってなくて~」

「それもそうだね。じゃあ、委員会ノートよろしくね?」

「もちろんだよ!じゃあ、次の休み時間に!」

「うん。教室でお弁当食べてるから、ゆっくりでいいよ~」

「ありがとう!あとでね。」

「バイバーイ。」




そう言葉を交わして別れる。




(よかった~でも、急げー!)




借りた辞書を持って急ぎ足で帰る。

腕時計を見れば、授業開始まで時間がない。

と言って、廊下を走るのは校則違反だから早足で移動。

スタスタと、足を動かし自分の教室へ向かう。

他のクラスの前を通り過ぎる。

どこもまだにぎやかで、それは私のクラスも同じことだった。




(はあ~よかった!借りれた、借りれた♪)




相変わらず、騒がしい教室。

気分良く、空きっぱなしだった後ろのドアから入る。








ガラガラ。



ピタ。



シーン・・・



「ん?」





ふと、違和感を覚える。

にぎやかな教室が、突然、とても静かになる。





(先生、もう来ちゃったのかな?)




ランナーで言えば、同時ゴール?

そう思って、黒板の前を見るけど先生はいない。

なにかあったのかと、周りを見わたす。





「・・・?」





心なしか、みんなが私を見ている気がした。




(先生だと間違えたのかな?)




いやいや、先生は教室の前から、黒板のあるドアの方からしか入らないけど。






「り、凛ちゃん・・・」

「マキちゃん?」





そう思っていたら、友達がうわずった声で話しかけてきた。

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