彼は高嶺のヤンキー様2(元ヤン)




長年付き合いのある俺だけでなく、その違和感に凛道も気づいていた。



「どうしたの?カンナさん?」



そのまま近づいて行ったかと思ったら――――――――――――






「カン――――?」

「凛たん!」



――――――――――――パァアン!!





カンナを呼ぶ凛道の声と、身を起こしながら凛道を呼ぶ宗方さんの声が続いた。

そのあとに、良い音が響いた。





「カ、カンナさん!?」


「高千穂!?」

「高千穂ちゃん、凛ちゃんに何してんのよ!?」





カンナが、思いっきり凛道の横っ面をはたいていた。





「おいおい・・・・」

(なんでそうなる!?)





周りも驚くが、俺も予想外。

一番驚いているのは、凛道だったと思う。





「カンナさん・・・!?どうして・・・・!?」




呆然としている凛道に、背中しか見えないカンナが言った。




「テメーで考えろ、ボケ!!」

「あ!?カンナさん!」





凛道にそう言い放つと、凛道の側から離れる。



「おい、カンナ!」



呼び止める俺を無視して部屋から出て行った。



「カンナさん・・・?」

「凛・・・!」

「大丈夫ですか、凛さん!?」

「凛ちゃん、しっかり!もう、どうしたの、高千穂ちゃんは!?」

「烈司、高千穂が殴るとわかって声をかけたか?」

「はは・・・よけるまでには、間に合わなかったけどなー・・・」

「なんやねん!?あの二人、仲悪いんかー!?えんなんとかクン!?」


「円城寺だ、ボケ!すんません、瑞希さん、失礼します!」




よくわからない関西人に怒鳴り、瑞希さんに謝って部屋から出る。

居たたまれないような気持で、カンナを追いかける。

チラッと、目だけで瑞希さんを見る。

どうせ、凛道しか―――




(―――見てない!?)




見ていなかった。

抜け殻のように、ぼーとしている凛道の隣にいながら、その周りで騒ぐモニカさんや可児をよそに『見ていた』んだ。




(俺を見てる―――――――――――)





ジッと、瞬きすることなく、真っ直ぐ見ていた。

なにか、意味がこもっているような瞳。





「――――――――――――!」


(なんなんだよ!?)





耐え切れず、俺から視線をそらす。

見てもらえたことへの嬉しさと、わけのわからない疑問を持ったまま、俺は店を後にしたのだった。


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