彼は高嶺のヤンキー様2(元ヤン)
秀君の側に近寄り、身を低くしてドアの周りに隠れる。
程なくして、足音と一緒にドアが開いた。
「おい、持ってきたぞ!」
「ありがとうございます。では、先に身分証明書を、バーコードにかざしてもらえますか?」
チェーン越し、わざと離れた場所から頼む秀君。
これに相手は身分証明書を差し出す。
「ほら!」
「あ・・・いや~困ります。そちらはお客様の個人情報ですので、お客様が手に持った状態でお願いします。」
「だったら、こっちによれよ。」
「出てきていただけませんか?」
「俺は客だろう!?」
「それもそうですね。失礼しました。」
近寄りながら、改造されたスタンガンを差し出す。
「タッチしてください。」
「ほら!」
そう言ってかざすが、何も起こらない。
「あれ?おかしいな・・・すみません、もう一度。」
「チッ!ほら!」
もちろん、何も起こらない。
「すみません、もう一度。」
「まだかよ!?」
「もう一回。」
「おい!なんなんだよ!?」
「もう一度です。」
「いい加減にしろよ!?」
相手がキレはじめたところで、秀君は言った。
「申し訳ありませんが、お客様の身分証、本物ですか?おもちゃを出されては困りますよ?こっちは、仕事してんだからさ!」
「なんだとぉ!?」
最初は丁寧に、最後は乱暴に言う。
これに怒った相手が、チェーンをはずして出てきた。
「てめぇ!もういっぺん言って――――――――――!?」
「うははは!」
ゴキっ!
「う!?」
秀君に掴みかろうとした男から、良い音が響く。
「ヤマト!?」
「うはははは!えータイミングやろう~?」
片手で、敵を仕留める関西人。
これに秀君が、帽子を直しながら言う。
「コラぁ・・・なに人の獲物とってんだ・・・!?」
「うははは!いやいや、動くもんはつかみたくなってな~!すまん、かんにんや!」
「てめ!」
(え!?喧嘩になる!?)
穏やかな面しか見たことなかった秀君が切れ顔になる。
それを見ながら、やっぱり彼もヤンキーなんだと思ったが~
(そう考えてる場合じゃないよね!?)
〔★場外乱闘の一歩手前だ★〕