彼は高嶺のヤンキー様2(元ヤン)
敵と争う前にもめそうな男子2人。
驚く私の耳に、制止の声がかかる。
「よせよ、秀!」
「カンナ。」
「あたしらの目的は、部屋に入ることだぜ?」
「そうだよ、秀君。」
彼女の言葉に続くように、私も慌てて止める。
「君の演技のおかげで、ほら・・・」
開け放たれた玄関を指さす。
長く続く廊下の右側から、明かりが漏れている。
にぎやかな声もしていた。
(きっとあそこに、瑞希お兄ちゃんがいる。)
そんな思いで語りかけた。
「ゲートは開きました。僕らがもめる相手は、あっちですよ。」
「・・・・そうだったな。」
私の言葉に答えて、秀君がうなずく。
機嫌も直る。
「そうですよ!さぁ行きましょう、みんな。」
「チッ!勝手に仕切るな、凛道!」
納得する秀君を含めた一同。
ただし、円城寺君の機嫌は相変わらず悪い。
「うははは!緊張する!」
「だったら黙れよ、テメー!つーか、なんで落した敵を持ったまま来てんだよ!?」
「なんでってカンナちゃん~こいつ身分証明書持っとるやないか?落としたらあかんやろう?」
「それだけ持って来い。」
「いや、連れて入って正解だよ。」
「凛!?」
「人が入口で倒れていたら、住民に見つかって通報される可能性が高い。部屋に入れて、転がしていた方がいいよ。」
「せやせや、そういうことや!」
「そうだけど、ムカつく・・・!」
「じゃあ、そのムカつく気持ちを発散しよう、カンナさん。悪いが、ここからメンバーを分ける。秀君と悠斗君は、玄関と廊下付近で待機。蛇塚の応援が来た時に備えるのと、俺達の退路を守っていてほしい。」
「はあ!?俺は戦えないのかよ!?」
「文句言うな、悠斗。総長さんに従いな。」
思った通りの不満は出たが、片割れがなだめてくれたので不満が大きくならずに済んだ。
「ありがとう、秀君。残りは、僕と一緒に瑞希お兄ちゃんの奪回。中の様子をうかがい次第、突入する。」
「そうこなくっちゃな!」
「つーか、最初からそのつもりだ。」
「うははは!」
「じゃあ、任せましたよ、2人共?」
「わーったよ、くそ!」
「そっち任せたから、こっちも任せろよ。」
「もちろんです。」
そう約束して、ゆっくりと廊下を歩く。