彼は高嶺のヤンキー様2(元ヤン)
(変だな~辞書はすぐ使うし、運ぶ時に重いから、いつも机のまわりにおいてるんだけどな??)
私達の学校は、1人1人がロッカーを持てる。
出席番号の書かれた鍵を、鍵穴に差し込む。
ガチャン。
「・・・・やっぱり入ってない。」
入れているのは体操着や化学室で使う白衣など。
ゴソゴソと、全部引っ張り出してみるけど、分厚い本は出てこない。
(ないよね~入ってるわけないとは思ったけど・・・・)
「ちょっと、邪魔!いつまでそこにいるのよ!?」
「え!?あ、ごめんなさい!すぐにどくから~」
クラスメートに怒られ、押し込めるようにして物を入れて鍵を閉めた。
「邪魔だったよね~?」
「とろいんだよね!」
(そんなに怒らなくてもいいじゃん?カルシウム不足じゃないの?)
背中に文句を受けながら、自分の席に戻る。
「凛ちゃん、あった?」
「ううん・・・なかった。」
「やっぱり。こっちもないよ。」
「凛ちゃんの英英辞典、なかったよ。」
「そっか、ありがとう。これじゃあ私も、他のクラスに借りに行かなきゃ・・・」
「でも、時間ないから、次の休み時間にしたら?」
「うん、そうするよ、夏美ちゃん。ありがとう。」
心配してくれる友達にお礼を言う。
ほどなくしてチャイムが鳴り、みんな席に着いた。
(もしかして・・・・・・)
他のクラスメートが朗読する漢文を聞きながら思う。
(・・・・・田渕の仕業じゃないよね・・・・?)
奴は、半グレ集団を味方につけていると言っていた。
半グレのほとんどが10代の若者。
高校生ぐらいが多い。
―田渕は、ただの不動産屋じゃない―
瑞希お兄ちゃんの言葉がよみがえる。
(これは・・・・気を抜けないな。)
嫌な予感に、少しだけ手が震えた。
武者振りだと、自分に言い聞かせた。