鬼に眼鏡
「ここに、雅夫さんの写真も用意してありまーす」
わざとらしい口調で言った玲奈が、画面を操作しはじめる。
「あーっ、お前っ! いつの間に!」
雅夫は画面に映った自分の写真を見て、つい声をあげた。
「修学旅行に行った時の写真! 随分遊ばせてもらったんだ。あっ、こっちは後々公開で」
画面に『ヤクザ顔の女性?』の姿が映し出されたが、そこは玲奈が流してしまう。
ファイルの中に『雅夫NO1~NO7』とあるのが雅夫は気になったが、知ってしまうと怖い気がしたので、敢えて見ないふりをした。
「髪形変えただけでも、印象って随分違うんだよ。これが雅夫さんの坊主頭。で、これが雅夫さんの長髪。で、これが――」
「お前、暇だろ? もっとましな時間の使い方をしろ」
次々と映し出される別人の自分に戸惑いつつも、雅夫は玲奈に言う。
すると――
「ヤクザさんの七三分け」
玲奈が画面を操作した途端、衝撃的な雅夫さんの映像が映し出された。
思わず硬直した雅夫の横で、画像を加工したはずの本人が腹を抱えて大笑いをはじめる。
「これさー。涼香にメールで送ったら、もう爆笑! 第二弾のアンコールをいただきました。えっと……返信は――」
「消せ! 今すぐ消せ! つーか、犯罪だろこれ! 犯罪じゃないんですか!?」
「……はいいえ」
「どっちつかずな返事すんなぁ!」
興奮して肩を震わせる雅夫の横で、玲奈が反省する様子もなく続ける。
とはいえ、雅夫は髪型を変えただけで別人になった自分を見て驚いていた。
もしこれに眼鏡が加わればどうなるのだろうか――そんな思いがよぎる。
思いに耽っている雅夫の視界に、玲奈が覗きこむかたちで割りこんできた。
「さあ、買いに行こうか眼鏡! 雅夫も来るでしょ? 面接が有利になるのは間違いないはずだからさ。何もしないよりやってみよう!」
どちらかというと楽しんでいる節のある玲奈の言動ではあるが、雅夫は従うことにした。
少しだけ、今の自分を開拓させるために――
わざとらしい口調で言った玲奈が、画面を操作しはじめる。
「あーっ、お前っ! いつの間に!」
雅夫は画面に映った自分の写真を見て、つい声をあげた。
「修学旅行に行った時の写真! 随分遊ばせてもらったんだ。あっ、こっちは後々公開で」
画面に『ヤクザ顔の女性?』の姿が映し出されたが、そこは玲奈が流してしまう。
ファイルの中に『雅夫NO1~NO7』とあるのが雅夫は気になったが、知ってしまうと怖い気がしたので、敢えて見ないふりをした。
「髪形変えただけでも、印象って随分違うんだよ。これが雅夫さんの坊主頭。で、これが雅夫さんの長髪。で、これが――」
「お前、暇だろ? もっとましな時間の使い方をしろ」
次々と映し出される別人の自分に戸惑いつつも、雅夫は玲奈に言う。
すると――
「ヤクザさんの七三分け」
玲奈が画面を操作した途端、衝撃的な雅夫さんの映像が映し出された。
思わず硬直した雅夫の横で、画像を加工したはずの本人が腹を抱えて大笑いをはじめる。
「これさー。涼香にメールで送ったら、もう爆笑! 第二弾のアンコールをいただきました。えっと……返信は――」
「消せ! 今すぐ消せ! つーか、犯罪だろこれ! 犯罪じゃないんですか!?」
「……はいいえ」
「どっちつかずな返事すんなぁ!」
興奮して肩を震わせる雅夫の横で、玲奈が反省する様子もなく続ける。
とはいえ、雅夫は髪型を変えただけで別人になった自分を見て驚いていた。
もしこれに眼鏡が加わればどうなるのだろうか――そんな思いがよぎる。
思いに耽っている雅夫の視界に、玲奈が覗きこむかたちで割りこんできた。
「さあ、買いに行こうか眼鏡! 雅夫も来るでしょ? 面接が有利になるのは間違いないはずだからさ。何もしないよりやってみよう!」
どちらかというと楽しんでいる節のある玲奈の言動ではあるが、雅夫は従うことにした。
少しだけ、今の自分を開拓させるために――