私の上司




予想通り一ノ瀬さんが立ち止まったのは高く聳え立つタワーマンション。






正面玄関で鍵を差し込む彼の横顔を
静かに眺めていると二人だけの世界にいるみたいに感じた。







エレベーターもガラス張りで夜景が綺麗に見渡せる。






『毎日こんな綺麗な景色が観れるんですね。』









綺麗でロマンチックなムードに酔いしれる私を横目で見ながら






「高いとこ得意じゃねぇんだよ。」








そう言って夜景に背中を向ける一ノ瀬さん。





…意外な彼の弱みを見つけた私はバレないようにクスッと笑ってしまった。







最上階で止まったエレベーター。







スタスタと長い廊下を歩いて行く一ノ瀬さんはよりかっこよく見えた。






「ん。」






ある扉の前で立ち止まると
見た目とは裏腹にあまり整理されてない鞄から鍵を取り出した。





扉が開いた先は一ノ瀬さんのプライベートルーム。









一歩足を踏み入れた瞬間に香る彼の香りにドキドキが止まらない。







突き当たりに広がるリビングは割とシンプルにまとめられていて、








横の本棚には難しそうな本が溢れかえり床に山積みになっていた。








…整理、苦手なのかな?







そう思いながら色々な本を手に取ってみる。






[ビジネス社会での生き方]








[礼儀、マナーの基本]








いかにも真面目な一面が覗ける沢山の本の中で目に入ったのは







。*[女性が喜ぶプレゼント]









ねぇ、一ノ瀬さん?




…これは見なかった事にしちゃう。












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