私の上司
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『…んっ…はぁっ…』







甘いキスはお互いの体温を高めて、
鼓動を早くさせた。







ふと、一ノ瀬さんの手がシャツの下に侵入してくる感覚にビクッと体が動いた。





『…だっ…ダメ…』





「…なんで?」






『…心の準備が…



…本当に、初めてなんです』







恥ずかしくて唇を噛むと降ってくる舌打ち。





「…マジで?」






『…すいま…せん。』






ふーん、と言いながら私から少し離れると尖っていた唇がニヤリと上がり私に向けられた。







「…ま、まだ誰にも染められてねぇ体の方がいっか。」







優しい笑顔じゃなくて怪しい笑顔で私の唇に触れた。






『…一ノ瀬さんは?』






「…ん?俺の初体験?」






怪しい笑みは消えないままあと数ミリでキスする位顔を近付けて、




「…秘密。」






掠れた声で一言私に呟いた。






『…えっずるいですよ!なにそ…』






私がその先を話せなかったの彼の唇が優しく触れたから。






キスだけでこんなに甘い気持ちになってしまう自分がたまらなく恥ずかしい。







色っぽく少し筋肉質な腕でギュッと包んでくれる彼から…



甘い言葉は出ないけれど。









「…寝るぞ。」








そう言って寝室を指差す彼の経験を想像して嫉妬するのも嫌だった。




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